2020.12.01

試しにかおりサンを褒めちぎってみよう。

さて、12月号です。今年もいろいろありました。11月1日に書いていますが、皆様のお目に触れるのは12月。というワケで、今年の締めくくりに、どんなコトを書こうかなぁ~、とぼんやり考えていたところ、そうだ、年末なので、せっかくだから誰かの事を褒めちぎってみようじゃないの!と、唐突な、思考の方向性がよくわからないことを考えてしまっていたのでした。

 

で、誰を褒めちぎろうか、と思い巡らせた末、かおりサンを褒めちぎる事といたしました。

 

かおりサン。ざっくり説明いたしますと、横浜の辺境地、駅から離れた緑の多い住宅街の県道沿いにポツリと佇む、スタイリッシュな「立ち飲み屋さん」をひとりで切り盛りしているフシギな女性です。初めてそのお店に足を踏み入れた時を思い返してみましょう。不慣れな街で道に迷って途方に暮れた僕が、遠くにぼんやり浮かぶ、なにやらお店らしき明りに吸い寄せられ何とかたどり着き、恐る恐るその店のドアを開けるとカウンターの向こうにエプロン姿の品のいい、なぜこんな僻地にこんな絶世の美女が!と、軽く眩暈を覚えつつレモンサワーを注文した、と、まぁそんなところです。

あるはずのない場所に、ありえないお店があって、扉を開けるとクールな美女が微笑んでいる、と。これは、雪の森で道に迷いポツンと佇む山小屋を見つけて入ってみると、この世のものとは想えない美しい雪女と遭遇した、ということと同じくらい神秘的な出来事です。

 

藤間 久子『Slowly』

さて、そのかおりサン、特筆すべきは、その美貌だけではありません。何と言ってもお店で供されるお料理が、これまた美味だとくる。

そりゃなんだかんだ言ってもそこは「立ち飲み屋さん」なので、お値段的には抑えられていますよ。でもねー、なんかオシャレなんだなー、おつまみが。なんか洗練されているんですよねー、酒の肴が。なんか拘りを感じるんだねー、お酒のチョイスに。

これは僕の持論でありますが、美しい人が作る料理は美味しい、を、まさに証明することであります。ま、言い方の角度を変えると、ちょっとした美人が作った料理は、そうでない人が作った料理よりも、何となく美味しく感じる、とも取れますけどね。こんなこと書くとまたお叱りを受けそうだけど。

 

女優さんのようなオーラを持つ美しい人が微笑みながら作るセンスのいい料理、それだけでもお店の中の雰囲気は、上質なものになるのは言うまでもありませんが、そのかおりサンのイチバンの褒めちぎり部分は、何と言っても、毒舌にあります。

知り合って間もないころ、ふとした会話から「おいしい水とか言ってお金出してみんな買うけど、飲んでみりゃただの水じゃね?と思いませんか?」と言い出したと思ったら「鎌倉ハムとかなんとか言ってみんなありがたがって食べてるけど、食べてみりゃ、フツーのハムじゃね?って思いません?」といった、「アタシそういう人達の感覚わかんないんですよねーみたいな?」と、会話の中に細かい毒のエッセンスが効きまくり。きれいな顔で丁寧な言葉で毒を吐く。

 

極めつけは「これ、ちょっと言いにくいんですけど、オサムさん、相田みつをの詩っていいと思います?あたし嫌いで。でも相田みつを嫌いって大声で言うと世間の人達から悪いヤツだと思われそうで今まで言えなくて」とカミングアウト。はい、水にしろハムにしろ、相田みつをさんの詩にしろ、僕もまったく同じ意見を持っていました。そんなことから意気投合し、顔を合わす度に相田みつを先生の詩のパロディーで大盛り上がりです。みつを先生ファンの方、どうか気を悪くされぬよう。年末にかおりサンを褒めちぎってみただけだもの。

 

エッセイスト 北園 修

Photo:藤間 久子『Slowly』

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