2022.12
横浜にしっかりと根を張り、 社会の課題に意欲的に 挑戦する人材を育て、 社会へ貢献する大学を 目指しています!
横浜市立大学理事長
小山内 いづ美 氏
Profile
昭和34年生まれ。昭和59年4月 横浜市採用。平成15年4月 磯子区福祉保健センターサービス課長。平成17年4月 保土ケ谷区総務部総務課長。平成19年4月 都市経営局経営企画調整部調査・広域行政課長。平成21年4月 都市整備局総務部総務課長。平成22年4月 都市経営局東京事務所長。平成25年4月政策局担当理事(東京事務所長)。平成26年4月 東京プロモーション本部長平成28年4月 栄区長。平成31年4月 公益財団法人横浜市男女共同参画推進協会理事長。令和3年4月公立大学法人横浜市立大学理事長(現職)
小山内理事長の経歴から聞かせてください。
現在の職は2年目ですが、元は横浜市職員でした。定年退職後は、横浜市男女共同参画推進協会におりました。
定年前は、栄区長3年間、その前は6年間、都内で横浜市のプロモーションの本部長をしていました。これまで大学での経験はなく当初とまどいましたが、政策局、都市整備局、各区様々な仕事の経験から、これも新たなチャレンジだと腹を決め、今では、経験のすべてが大学の仕事に役立てられると実感しています。
私の駆け出し係長時代は、中区で街づくりを担当しており、中区のそれぞれ特徴に満ちた各商店街のさらなる魅力づくりや来街者向け回遊性の確保、開港の歴史と共にある町並みの保全と観光地化の調和について、街の経営者や町内会の方々に教わることも多く大変鍛えられました。今や当時お世話になった方々は代替わりし、娘さんが本学の教授になられていたりと、発展や成長していく様子は嬉しいことですが、世代も時代も変わる速さが身に沁みます。
横浜市立大学の紹介を簡単にお願いします。
本学の源流は1882年に創設された横浜商法学校まで遡りますが、1928年に設立された横浜市立横浜商業専門学校(Y専)が大学としてのスタート年となっています。
現在は国際教養学部、国際商学部、理学部、データサイエンス学部、医学部の5学部と大学院(研究科)を有しています。
開放的かつ国際性、進取性に富んだ学風が伝統として受け継がれ卒業生は幅広い分野において国内外で活躍しています。
2 か所ある市大附属病院が創立150周年を迎えました。
はい、本学にはもう一つの源流がありまして、1949年に合併した横浜医科大学のルーツが1871年に開院した「横浜仮病院」となります。
鉄道開業、新聞日刊紙発刊など開港後の近代化と同時期に、「丸善」創業者の実業家で医師の早矢仕有的氏によって創設されました。今年10月1日に創立150周年式典を1年遅れて執り行うことができました。
「横浜仮病院」から「十全病院」へ曲折はありましたが、最新の西洋医学をもって開港後に横浜を襲った伝染病治療にあたり、関東大震災時や世界大戦時には災害医療の拠点として多くの方の救命救護にあたりました。この使命感が現在のコロナ対応にも引き継がれています。
2020年2月、横浜港に多くの感染者を乗せたダイヤモンドプリンセス号船内の重症患者を真っ先に受入れました。
地域医療の「最後の砦」を合言葉に、先進医療を追求してきた実績を現在、医学部及び2病院を統合・再整備する計画が進んでいます。診療、教育、研究のあらゆる面で世界レベルを目指し、横浜市民の健康増進へさらに貢献を目指しています。
着任された1年前はコロナ禍で大変な時期でした。市大ではいかがでしたか
そうですね、当時はキャンパスに大学生の姿もなくて本来の雰囲気がどのようなものか私自身もわかりませんでした。
少しずつコロナが落ち着いてきたなかで、学生も戻りつつありホッとしています。講義についてはリモートと対面のハイブリッド授業で乗りきってきました。
本学は学生数約5000人と大きくなく、アットホームな雰囲気も特徴です。先生方が学生を丁寧にフォローし学生満足度は高評価を維持できました。来年度からはすべて対面になる予定ですが、国内外と同時に繋がり時間も費用も節約できるなどオンラインのメリットも踏まえた効果的な授業の展開が期待されます。
アフターコロナを見据えての来年度の抱負などを聞かせてください。
基本目標としては「つながりを大切に誰もがにこやかしあわせにくらせるまち西区へ」を掲げています。具体的にはまず、新型コロナウイルス感染症対策の一層の強化です。ワクチン接種の実施なども含めて区民の皆さんの安全、安心を第一に考え、経済回復への道筋をつくっていきたいと思います。
もう一つの柱といえるのがデジタル技術の活用によるDXの推進です。このデジタル区役所は西区と港南区がモデル区になっていて、オンライン会議やテレワーク、会議のペーパーレス化などを推進していくことになります。
また地域のDXに向けて区民の皆さまがデジタルの恩恵を受けられるようにデジタル技術の活用を進めていきます。
たとえば今、マイナンバーカードの普及推進を図っていますが、窓口にこなくてもスマホで申請するとか、窓口でもマイナンバーカードを提示するだけで住所や氏名が記載され申請書を書かなくてもよい仕組みを導入するなど、それらを市内18区へ横展開することを目指しています。また地域のつながりをつくっていくうえでもICTの活用支援は大切だと思っています。
このほか区民の皆さんがいきいきと健やかに暮らしていけるまちづくりのために、地域における自助、共助の取組を支援していきたいと考えています。昨今の風水害対策をはじめ防災機能の強化は喫緊のテーマです。
また、ウイズコロナにおいては地域資源を活用した回遊性の向上、商店街支援、イベント実施などを通じた賑わいづくりを進めたり、SDGsの推進においても区内の企業、団体の皆さまと連携していきたいと考えています。
コロナ禍におけるトピックなどありますか。
まず、学生の気持ちに寄り添った話題として、今の3年生はコロナ禍で入学式を行うことができませんでした。
そこで今年の入学式の前日に、3年生たちを招いて、当日のセットを活用し「入学を祝う会」を開催しました。メディアにも多く取り上げられ、多くの方に改めて祝っていただき、皆さんの晴やかな顔を見ることができて、私もとても嬉しく思いました。
もう一つ、病院ではコロナ対策、対応において診療としっかり両立させて市民を守ってきたことが上げられます。まず横浜市の依頼を受けてコロナの軽症・中等症を対象とした「はじめ病院」の開設準備から診療運営に、医療従事者と協力し連携して、1000人を超える方の重症化を防ぐことができたことです。
地域の医療機関との「顔の見える関係」の重要性も認識できました。
また南区にある市民総合医療センターはコロナ禍において大規模ワクチン接種、深夜早朝ワクチン接種を行い、ワクチン接種に行くことが難しい市民に応えてきました。
CT搭載の医療車を用い、高齢者施設などへ訪問して指導にあたってきたことで医療を福祉の連携についても望ましいあり方が議論されるようになりました。
大学病院が150周年を迎えた話がありましたが、大学としては今、6年後に迎える100周年に向けて動き出しているそうですね。
そうですね、冒頭で申し上げた通り、1928年を本学の創立年としていますから、2028年に創立100周年という節目を迎えます。90周年のときからすでに4つの重点事業を進めています。
具体的には「世界に羽ばたくグローバル人材育成事業」「世界に発信する研究創生事業と研究者育成」「学生のための環境整備事業」「附属2病院と医学、医学研究施設等の一体的整備事業」で、教育・研究・医療を軸に時代に挑み、さらなる発展を目指します。
またこの100周年記念事業を推進していくために「YCU100募金」の寄付も募集しています。この場をお借りして、皆さまのご理解とご支援をどうぞよろしくお願いいたします。
アフターコロナを見据えての来年度の抱負などを聞かせてください。
市大は、「研究の市大」と呼ばれるほど、論文の質と数ともに秀でており、研究成果を国内外に積極的に発信しています。
先日発表されたTHE世界大学ランキングで本学は、国内11位と(公立大学では国内1位)上位にあります。
また、医学部病院をもつ大学に、データサイエンス学部のある大学は、現在本学のみです。
来年度からヘルスデータサイエンス研究科(大学院)に博士後期課程が整い、さらに、医療面を社会課題をデータで分析し、民間企業などを連携し社会実装へイノベーションを起こす起爆効果も期待しています。
また地域社会への貢献についても商店街の振興、郊外の街づくり、データを駆使した課題分析による課題解決と社会実装などに取り組んできましたが、今後もアイデアを出して地域の皆さんとの連携を継続していきます。
そして市民の皆さんにも市大がどのようなことをしているのか、わかりやすい工夫をして理解を得、信頼関係を築いていきたいと思います。
さらに横浜市との連携については、子育てと子育て世代へ着目している方針に合わせて、市大ができることを病院の機能も含め議論していますが、今後横浜市と協調しさらに国内外へも市大の強みを明確に発信し貢献できるよう尽力していきます。
横浜市立大学にて
インタビュアー福井