2023.06
IDEC横浜はお客さまに寄り添う姿勢をもって、 市内企業の持続的な成長を支援します。
公益財団法人横浜企業経営支援財団(通称:IDEC横浜)理事長
菅井 忠彦 氏
Profile
生年月日:昭和34年10月29日。主な社歴、現職:昭和57年04月 横浜市役所入庁。平成16年4月 総務局組織改革推進部職務公正調査課長。平成23年5月 財政局契約部長。平成24年4月 政策局総務部長。平成26年4月 保土ケ谷区長。令和2年4月 公益財団法人横浜企業経営支援財団 理事長就任。
IDEC横浜のポジション、業務内容などから紹介ください。
私ども、公益社団法人横浜企業経営支援財団(IDEC横浜)は、横浜経済の活性化と地域社会の健全な発展に寄与することを目的に設立された公益法人です。横浜市長から指定を受けた市内唯一の「中小企業支援センター」であり、横浜市の外郭団体として横浜市内で起業をお考えの方や、中小企業者や小規模事業者の皆さまのニーズに応じて国・県・市の支援施策の紹介をはじめ各種経営相談、外部専門家の派遣、経営に関するセミナー開催、企業間のマッチング、海外展開の支援、研究開発スペースの提供など幅広い事業を行っています。
この「中小企業支援センター」というのは、中小企業支援法に基づいて指定された法人で、基本的に各都道府県にあります。神奈川県では「神奈川産業振興センター」があり、政令指定都市の支援センターとしては、県内にはIDEC横浜のほかに川崎市にあります。また、相模原市にも産業振興の支援機関がありまして、それぞれ連携を図っています。IDEC横浜の職員数は少数精鋭の36名体制ですが、外部の専門家が約250人いて、相互に連携・協力しながら業務を行っています。
当法人会の中にもお世話になった企業もあると思いますが、2020年4月からはじまったコロナ禍の状況はいかがでしたか。
私がIDEC横浜に着任したのが2020年4月で、着任してすぐに首都圏に緊急事態宣言が発出されまして、非常に驚きました。当時、IDEC横浜は移転前で神奈川新聞社やテレビ神奈川が入居している横浜メディア・ビジネスセンターの7階フロアにありました。多くの企業が売上げ減少などで資金繰りに困っており、横浜市の制度融資(無利息・無担保の融資)の相談のために専用の会議室を用意したのですが、それでは入りきれずに廊下やエレベーターホールまで待っていただくようになりました。
コロナウイルスがどのような感染症かまだわからない部分も多い中、そして危機的な経済状況の中、非常な緊張感をもって仕事をしていましたね。
相談するほうも大変でしたが、受ける職員の方も負荷がかかりましたね。
職員と話をしていてありがたいと思ったのは「私たちはエッセンシャルワーカーであり、こういうときこそ出番だ」と言って、数多くの企業の皆さんの支援にあたるため職員一丸となってまさに総力戦で挑んでくれたことです。理事長室の隣の応接室をコールセンータとして使用していましたから、どのような状況かよくわかり本当に未曾有の事態であることを日々感じていました。
また一方では直接窓口に来られない方にはインターネットを活用したオンライン相談を開始し、各種経営セミナーなども配信するなど工夫をしてきました。こうしたサービスは今後も実施していくことを考えています。
コロナ禍が収束に向かっている中で、今後もまだ予断を許さない状況ではあると思いますが、現在はどのような状況でしょうか。
3年前、新型コロナウイルスがまん延し経済に打撃を与えていたときは、当面の資金繰りのニーズが高く、国を中心とした持続化給付金や雇用調整助成金などの支援策が中心でした。コロナ禍の出口が見えてきた今は、経営課題に直結するような問題は少なくなっていると思います。ただウクライナ情勢による原油高、資源高騰、人手不足などいろいろな問題があり中小企業を取り囲む状況は依然として厳しさが続いています。景気先行きについては各種政策の効果もあり持ち直しが期待されていますが、世界的な金融引き締めで海外景気の下振れが日本にも影響を与えると懸念されます。県内の景況感をみても製造業においては原材料費の上昇、電気代の高騰によって収益が圧迫されているようです。非製造業においてはインバウンドでの売上増が見込まれるものの賃上げによる人件費の高騰や人手不足によって先行きは不透明のようです。
そうした中で横浜市内の企業の皆さまからはどのような声が届いていますか。
たとえばエネルギー価格の高騰で、運送業では燃料費が上がって大変とか、飲食業では光熱費が上がって経営に影響が出ているという話を伺っています。また原材料の多くを輸入に頼っている製造業では材料の高騰分を価格へ転嫁がしにくいといった話もあります。最近はまた脱炭素化に向けた環境投資、デジタル化、インボイス制度導入、物流の2024年問題など企業にとって新しい課題がありますから、IDEC横浜としてもこうした課題に対応していくために専門家の充実を図るとともに、職員のスキルアップを行って、しっかり支援していきたいと思っています。特に今年度はデジタル化、脱炭素化、インボイス制度の相談対応を重点的にやっていきます。
今後のIDEC横浜の方向性についてどのようにお考えですか。
私が着任して取り組んだのがビジョンの策定です。
これまで概念図のようなものはあったのですが、やはり全職員共通の認識として言葉にしたほうがいいだろうと思い、策定にあたっては職員が考え、各職場で議論してもらっていくやり方でつくりました。
決まったビジョンは、「IDEC横浜は、笑顔でお客さまに寄り添い、実践力と現場力をいかし、市内企業の持続的な成長をお手伝いします」です。この「実践力」は職員自ら企業支援や施設運営についてPDCAを回すことができる力であり、「現場力」は訪問先や管理運営する産業関連施設の場で課題を的確に捉え、臨機応変に解決する力です。
IDEC横浜はチーム一丸になって仕事をするため、個々がスキルアップのために外部セミナーの受講や中小企業診断士の資格取得へのチャレンジ、階層別研修などを行い、企業経営支援のプロ集団となるよう努めています。
また経営会議では市内中小企業の動向や支援策を部・課長で共有しタイムリーで的確な支援実施につなげています。
菅井理事長個人として取り組みたいことはありますか。
就任後、IDEC横浜の特長というのは「お客さまに寄り添う姿勢」だと実感しています。これは小規模事業者の皆さまにとってとても大切なものであると思いますので、この風土、姿勢を守り続けたい。そのために職員が「チームIDEC横浜」の一員として、誇りをもって、気持ち良く元気良く仕事ができる雰囲気、環境をつくることが私の務めだと思っています。
最後に当法人会の約2500社の会員企業に向けてメッセージをお願いします。
会員の皆さまは横浜の経済活動のまさに中心となる地域でご活躍される方々です。海外展開や販路開拓、新商品開発などでお困りの案件がございましたらお気軽にIDEC横浜にご相談いただければと思います。特に小規模事業者の皆さまには、お電話一本で職員、専門家が無料で事業所にお伺いし、課題解決のお手伝いを行っていますので是非ご利用ください。
公益財団法人横浜企業経営支援財団にて
4月5日取材
インタビュアー福井・橋本