2025.05
「明日をひらく都市 横浜」において、 建築設計の専門家集団として貢献していきます。
横浜市建築設計協同組合 理事長
小澤 勝美 氏

Profile
昭和29年7月9日生まれ。昭和53年3月 武蔵工業大学 工学部 建設学科卒業。昭和55年2月株式会社ユー・アール・ユー総合研究所 入社。昭和63年4月ユー・アール・ユー総合研究所 計画室長。平成4年ユー・アール・ユー総合研究所 取締役計画室長。平成7年 ユー・アール・ユー総合研究所代表取締役 現在に至る。
横浜市建築設計協同組合の紹介からお願いします。
私たち横浜市建築設計協同組合は(YSK)は、「横浜を中心に活動する地域の設計者、設計事務所の団体」として昭和57年に設立しました。主に横浜市の公共建物に関する設計監理を中心とした業務を行い、組合員数は34社、多くの一級建築士を擁して、意匠、構造設計から電気、機械設計を横浜市設備設計(YSS)とともに行う、総合設計事務所の体制をとっています。
具体的にはどのような事業に取り組んでいるのでしょうか。
これまでに2600件を超える横浜市の公共施設の改修改造などの維持保全業務、建物の長寿命化に係わる長期修繕計画や建築基準法12条点検、横浜市の小中学校500余校の耐震診断、耐震補強などを行ってきました。意匠系については、社会状況の変化とともに、地域の設計集団としての協同組合の在り方を常に考え、従来業務に加えて提案型の業務や調査研究型の業務、さらには地域社会での建築家集団としてシンクタンク的な機能を果てしていきたいと考えています。
意匠系以外の業務の柱はどのようなものがあるのでしょうか。
構造系と設備系があります。構造系において全国有数のレベルと自負しています。1991年には日本建築家学会大会で研究成果を発表し、96年度には「開口部」を有する鉄骨フレームの実験研究を東京大学総合研究所で実施しました。併せて補強建物の常時振動計測による検証を行うなど最先端の技術を用い、これが若手教育の一環にもなりました。
設備系においては、建築物に占める割合が量、質ともに増加しつつあり、その内容も複雑化、高度化しています。設備設計の重要性が高まるなかで設備グループでは110余名の設備設計技術者を有し、組合員相互の技術の向上と研鑽に努めています。またこの分野では環境問題、省資源・省エネルギー等の課題にも取り組んでいます。YSKの内部にはいくつかの委員会を設けて活動していますが、そのなかの一つである「研究活動委員会」では「青い地球と経済成長の両立を図る組合活動」を行い、社会貢献を目指しています。
小澤理事長は2021年の就任ですが、コロナ禍において支障はありませんでしたか。
私は、それまでの組合運営に大きな足跡を残された、金子前理事長よりバトンを渡されました。それまで副理事長として前理事長の舵取りを目の前にしてきましたから、当初は不安もありましたが、ある意味で腹をくくりました。おかげさまでコロナ禍の影響はそう大きくはなかったです。
就任翌年の2022年にはYSKの創立40周年で、秋にホテルニューグランドで記念式典を開かせていただきました。一般社団法人横浜みなとみらい21理事長の坂和伸賢氏に講演いただき、来場者向けとオンラインとのハイブリッド型で実施したことが思い出されます。
みなとみらい21事業の背景から街づくりの変遷、エリアマネジメントの実践、周辺施設の整備構想などについてお話いただきましたが、建築に携わる我々にとって、インフラの整備、街づくりといったことは非常に興味深く、大変貴重な時間になったことが強く印象に残っています。

これまでの4年間にわたる組合運営ではどのような方針をもって取り組んでこられたのですか。
就任後は事務局を移転し、体制新たに運営にあたってきました。当初より「機会」の創出と「リスク」の回避というものを、その都度の状況によって発信してきました。たとえばYSKは横浜市公共施設の維持保全の設計に長く携わってきましたが、その事業機会を継続していくために、常に品質向上に努めよう、という呼びかけを行ってきました。
また新規開拓として、横浜市の水道局や交通局、港湾局など他局にアプローチしたり、住宅供給公社などへの営業も進めてきました。さらに神奈川県には800以上の様々な協同組合がありますので、毎年いくつかの団体を訪ねてYSKとしてお手伝いできることを伺うといった取り組みも行っています。
リスク回避においては、受注対策に加えて少子高齢化が進むなかで、組合員の後継者問題、事業継承問題を共有して対応してきました。これについて組合員のめ、建築設計と街づくりの専門家集団としての立場から貢献したいと思っています。また一方では建設業を取り巻く環境も人手足や職人さんの高齢化、建築費の高騰など課題が山積みです。建設業を魅力的な環境にすることやその周知活動、働き方改革による3Kイメージの払拭、女性参加の推進など高いハードルがいくつもありますが、なんとしても乗り越えていく必要があります。
またYSKはY-SDGsの認証を受けました。今後は脱炭素社会の実現へISO14000を理解しながら自然エネルギーを研究、実践し地球環境問題の解決に寄与しながら、創造都市横浜の実現に向けて努力していきたいと思います。
中法人会の会員へメッセージをお願いします。
会員の方には「横浜大好き人間」が大勢いらっしゃるでしょうから、仲間を増やしながら、そういう方々がもっと表に出て、横浜の街をよりいっそう魅力的なものにするアイデアを出し、カタチにしていってもらいたいと思います。
税経研修センターにて(2025年2月26日取材)
インタビュアー 福井