2026.06
一つの「賞」が、子どもたちの未来を変える。 企業とともに広げる、かながわ発の未来づくり。
認定NPO法人こどもネットミュージアム 代表理事
鈴木 晶 氏
Profile
1968年、神奈川県茅ヶ崎市生まれ。株式会社アナザーウェア代表取締役。横浜で30年以上続くIT企業で、IoT・ビッグデータ・AI・ロボット分野を手がける。地域貢献活動として関わっていた「夢絵コンテスト」で、子どもたちが自信を持って成長していく姿に心を動かされ、2011年にNPO法人こどもネットミュージアムを設立、代表理事に就任。企業・学校・地域と連携しながら、障がい者雇用や学生ボランティアの育成など、地域全体で子どもたちの未来を支える活動を行っている。
認定NPO法人こどもネットミュージアムは「かながわ夢絵コンテスト」の主催で知られていますが、まずどのようなコンテストなのかご紹介ください。
まず前身となる「夢絵コンテスト」が生まれた経緯からお話しさせてください。今から30年前、一般社団法人神奈川県情報サービス産業協会(以下、神情協)が、地域社会への貢献を目的に絵のコンテストをはじめました。「ぼくたち、わたしたちの未来の世界」というテーマのもと、絵を通じて豊かな未来を考え、描くとともに、そこに貢献するITについても自然に関心を持ってもらえるよう企画されたものです。当時はまだIT業界の認知が高いとはいえず、より広く情報産業を知ってもらうというプレゼンス向上の意味もありました。私自身も本業でIT事業に携わり、神情協の会員としてこの取り組みに関わってきたのです。
30年以上前から始まったコンテストなのですね。対象は小学生でしょうか。
はい、県内の小学生が対象です。ピーク時には1万点を超える作品が集まるほど応募数は年々増加し、神奈川県内でも最大級のコンテストへと成長しました。一方で、運営は企業のボランティアに支えられており、規模の拡大とともに負担も大きくなり、10年目を迎えようとしていた頃、ひとつの節目としてコンテストの幕引きが検討されました。
それだけ普及したコンテストを終わらせてしまうのも惜しいですね。
そうなんです。私たちとしても運営の大変さを実感していた反面、規模も内容も充実したコンテストになったのに、という歯がゆい思いをもっていました。
そんな時に、私の心に強く残っていた一つの手紙を思い出しました。コンテスト受賞者の保護者の方からいただいたものです。お子さんは聴覚に障がいがあり、なかなか周囲となじめなかったのが、絵を描き始め、この夢絵コンテストで受賞したことで大きな自信を持つようになったそうです。どんどん表情が明るく元気になり、友だちも増え、明確な将来の目標まで持てるようになった、というお子さんの変化への感謝が綴られていました。
「一つの賞が、ここまで子どもの人生に影響を与えるのか」というこの実感が、コンテストを続けたいという、私の強い原動力になりました。そして2011年、NPO法人を立ち上げ、「夢絵コンテスト」を継承することになりました。
NPO法人こどもネットミュージアムの誕生ですね。
「夢絵コンテスト」の継承と同時に、子どもたちが安心して情報社会と関われるような活動も始めました。当時は、情報化社会の進展に伴い、子どもたちをネット社会から守る必要性が高まっており、小学生向けのネット安全教室や携帯電話の正しい使い方講座などを行っていました。
私は、NPO法人として収益を安定させながら事業を継続し、雇用を創出するモデルを目指しています。設立から15年が経ち、コンテストの名称は「かながわ夢絵コンテスト」となり、より地域に密着したかたちで、県内教育委員会のご後援や企業サポーター・スポーツチームのご支援のもと、事業の軸として継続しています。これまで集まった子どもたちの「夢絵」は、12万点を超えました。
「かながわ夢絵コンテスト」には色々な特徴があると伺っています。どのような点か紹介してください。
まず、「子どもたちに喜びと自信を届ける」という理念を実現するために、たくさんの賞を用意しているということです。特に、企業サポーターの皆さまからご設置いただく「企業サポーター賞」は、子どもたちに地元企業を知ってもらうきっかけにもなっていて、大きな特徴になっています。
結果発表ページには、その作品を選んだサポーターの方々のお写真とともに審査コメントを紹介していることもあり、「顔が見える」賞として、受賞者や保護者の方から毎年多くの感謝の手紙が寄せられます。中には、受賞した喜びから、その企業をイメージした絵を描いて、企業の方にプレゼントした子どももいました。「この賞をくれた会社はどんなことをしているのだろう」と興味を持ち、自ら調べ、家族や友人に伝える。そうして企業のファンが着実に生まれています。
もう一つの特徴は、年間を通じて応募作品の管理や返却には障がい者の方々が活躍していることです。作品が集まるほど障がい者の雇用が増えるので、その雇用は絵を描いた子どもたちが生み出していると言っても過言ではないのです。
作品返却を行わないコンテストも多くありますが、私たちは子どもたちの作品から生まれるこの雇用創出のために、すべての作品を無料で返却しています。
また、コンテスト運営には多くの学生ボランティアにも参加してもらっています。この活動をきっかけに、協賛企業や企業サポーターについて知り、交流をすることで、採用に至ったケースもいくつかあります。
こういった地域の活性化や経済発展につながる取り組みが評価され、2022年には神奈川県より「かながわ子ども子育て支援大賞 草の根賞」「かながわボランタリー活動基金 奨励賞」を受賞し、2024年には「認定NPO法人」として認定されました。
企業サポーターも多くコンテストへの共感の広がりを物語っていますね。
現在、約60社の企業の皆さまに応援していただいています。IT、飲食、製造業など業種も様々です。企業サポーターからの「賞」は、普段、子どもたちが直接関わることがない業種や仕事のことを子どもたちが知れる、未来へのプレゼントなのです。子どもたちと企業との出会いは、子どもたちの視野を広げ、将来の選択肢を広げることにもつながっていると、私は確信しています。
これからのビジョン、抱負をお願いします。
この神奈川県の中で、企業とともに子どもたちの成長を支えるコンテストとして、しっかりと根付かせていきます。
その上で、将来的には同じような取り組みを各地域へと広げていくことができればと思っています。神奈川県で培ってきた仕組みや経験をもとに、各地域の企業や団体と連携しながら、「夢絵甲子園」や「夢絵オリンピック」のように、国内のみならず海外にも子どもたちを応援する場を広げていけたらうれしいです。
当初取り組んでいた「子どもたちにネット社会との正しい接し方を普及する」という活動も、今後あらためて再開していきたいですね。
当会の2300社の会員へメッセージをお願いします。
かながわ夢絵コンテストは、子どもたちの未来のために、企業サポーターの皆さま、学生ボランティアの皆さん、障がいのある方々など、地域全体で創り上げているコンテストです。
30年前に子どもたちが描いた夢の絵は、今すでに現実になっているものも多くあります。未来は、夢を抱き続けた子どもたちが創り出していっているのです。
一つの「賞」が、子どもにとって大きな自信となり、そしてその喜びは、企業や社会に確かに返っていきます。ぜひ、地元の子どもたちの未来のために、御社の「賞」をご提供いただけたらと思います。一緒に、地域の子どもたちに喜びと自信を届けていきましょう。
認定NPO法人こどもネットミュージアムにて(4月1日取材)
インタビュアー福井













